楽園の夢






楽園の夢



プロローグ 玻璃の宮殿
第1章 アリューシャ
第2章 ハダナ
第3章 イルへ




アリューシャ



どこまでも続く、青い空。
その澄み渡る壁天には雲ひとつ見つけることは出来ない。
空と対照的な焼け付いた赤い大地もどこまでも、どこまでも地平まで続いていた。
大地は渇き、大気もまた水を求めていた。


「っあっちー」
オアシスの木陰で少年が暑さに喘いでいる。
地元の子供だろうが、慣れてはいても、流石にこの暑さは堪えるらしい。
暑さ避けのためか頭から被った麻布の下で赤茶の髪に隠れた青い瞳が同じ青を湛えた水場を恨めしげに見つめている。
その視線の先にいるのは俺と同じキャラバンのガキ共だ。
全員、成人の儀を終え、15も過ぎた筈なのだが、まるでそこらの子供のようにはしゃぎまくっている。
砂漠の長い旅を経て漸く辿りついたオアシスだ。
あと2、3日もすれば再びきつい旅が始まる。
そう思うと、呆れこそすれ咎める気にはなれなかった。

再び隣の少年に目を向ければ、麻布をさっきよりも目深に被って木にもたれかかっている。
だが、視線は相変わらず年甲斐も無く騒いでいるガキどもに向いたままだ。

あまり眺めているものだから、何かあるのかと思い、つられて同じところを見る。
だが、どこも変わったところは見られない。
やはりただのオアシスだ。
後は相変わらず騒いでいるバカドもだけ。
何かしきたりでもあるのかと思い、思い切って尋ねようとした時、少年が立ち上がった。
その足でこちらに向かってくる。
何となく、声がかけずらく、かといって見つめている訳にも行かず視線を外す。
すると彼は俺の目の前で泊まり、水辺を指差しながら聞いた。

「あいつら、あんたのキャラバンの仲間か?」

変声期前なのか、思ったよりも声が高い。
いや、そうじゃない。少年ではなく、目の前にいるのは少女だ。
逆光で顔はよく見えないが、その体つきは少女の柔らかさを持っている。
なかなか返事をしない俺に痺れを切らしたのか、少女はしゃがみこんで再び尋ねた。
『彼等は、貴方の仲間か?』
結構可愛い顔をしている。しかも、先ほどとは違う言語だ。どうやら言葉が通じなかったと考えたらしい。
それでは彼女に悪いので同じく、二つの言語で返事をする。
「そうだ、彼等は私の仲間だ」
『すまない、聞き取れなかった訳じゃないんだ。ただ驚いていただけで』

「そうか」

「あそこは水蛇や毒虫が多い。日が出ているうちは良いが、日が隠れたらけして近寄るな。もし毒に抵抗が無いのなら、あまり近づかない方が良い」
彼女はそうとだけ告げると立ち上がり、俺が言われた言葉を理解する前に歩いていってしまった。
俺は、彼女の言葉を反芻すると慌てて水辺の子供に注意する為に走った。





掲示板

戻る