無題

夕 〜残光〜


夜は大地が空へ投げる影

灯かり


藍天


季節

春によせて


生と死と

光と闇と

光の中には影が出来る

始まりと終わり 混沌の中で


夢幻

夜霧の幻

終焉


その他

輪廻転生万象回帰

楼蘭

軌跡

時の狭間で

無題

悲 哀 愛 カナシクテ

桜雨

忘却

とき

想い

世界

遠い隣人に向けて

何処へ

道程

カホリ・ニホイ

無題

理由

赴くままに


和歌・句・一行詩






掲示板

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朝が近づいてくる

新聞配達のバイクの音が遠く暗闇の中に聞こえ始める

美しく輝いていた星達もその光を徐々に失い

東の空をわずかに朱に染めながら女神の金の髪は波紋の様に広がっていく

静寂の闇に光が零れ

野には虫の音が響き渡る



薄明の中で町はその姿を取り戻し

最後に残ったシリウスが名残惜しげに消える頃

闇に舞っていた蝙蝠達に変わり

囀りと共に鳥達が姿を見せる



東の空に立ちのぼる陽炎も

エオスが差し伸べた手にひかれ兄神が顔を覗かせると火勢をそがれた



長き夜が過ぎ

闇を払い現れた太陽に植物達は色めき立つ

町もまもなく目覚めるだろう



朝が、来たのだ

































輪廻転生万象回帰 【時の果て】

全ては流転し

私は辿り着く

遠く遥かな時の彼方へ

時の果てを越えるのだ























楼蘭

なんて暗い空

東京の夜は暗く冷たい

地上には寒々しい見せかけだけの照明が細々と灯っている



その下で

光の消えた瞳の人間達が

固いアスファルトの上を闊歩している



その脇を

帽子を目深に被りうつむきながら

私はとぼとぼと通り過ぎる























軌跡

地は焦げ

海は干上がり

炎と化した大気が駆け巡る



人が死に

大地が死に

獣達が死ぬ

植物も死に絶えて



全ての死者を連れ

この星はいつまで回り続ける?

何処まで

この果てしない旅を続けるのだろう























夜は大地が空へ投げる影

山の端を照らしながら

陽が沈み行く



暗く闇に染まった山影が

最期の光に浮かび上がる




その茜い光が私を照らし

朱く染まった大地に

長い影を映す



雲は金色に輝き

やがて緋色へとその色は移り行く



太陽はその紅を濃くしながら姿を隠し

空には大地の影が広がり

東の空から光は失せ闇が迫る



そうしてゆっくりと、

しかし確実に影は空を覆っていく

その動きは本当にゆっくりで、

そして早い



まだ明るさを残すその空に幽かな瞬きの幻影を見る



やがて空を照らす幾万幾億の小さな光に気が付いて

私は、夜の訪れを知る



空は大地の影に飲まれて

静かに夜は訪れる























夜霧の幻

霧の中、暗い夜道を一人歩く

全てを忘れて自由になりたい

もう、疲れてしまった



何もかも・・・

全てが消え去れば良いのに



そう言い暗闇の中に佇むのは

もう一人の私



疲れきった顔をして

虚ろな目で私を見る



お前だってそうだろう?



と、その目は語る



同じ“私”なのだから・・・



憎しみと哀しみの入り混じったようなその問いに

私は答える



それでもいつか変わる日は来るはずだ、と

譬えそれが遠い未来でも



そして幻は消え去る

霧の中、外灯の元で見たのは

いつも押し隠していた

仮面の下のもう一人の私・・・

いつか傷つけられた私の中に生まれた虚無



今は未だ、あの日の絶望には遠い











































灯かり

家々に 灯がともる

木々は白霧に隠れ

ただ 川の音だけが

たゆまなく とうとうと・・・・・























時の狭間で

過去の希望と未来の絶望を胸に抱いて

現の夢に眠らせて・・・・・























無題

ただ 日々を無為に過ごしていく

そんな生き方では駄目なのだろうか



いつも

  時間に

    人に

       学校に

          社会に

             家族に

追い立てられて

段々に自分が失われていくのが分る

私が私でないものへと変質していく

そして

  どこかで抵抗し続ける私がいる

無理やり変化させられていく“私”

この時代に沿うように

少しづつ歪められていく



変わるまいと必死で抵抗をする“私”

頑なに心を閉ざして

誰も受け入れない



“私”が分裂していく

引き裂かれる痛みに赤い涙を流しながら



何処か

遠くへ行きたい

何にも煩わされる事のない・・・

誰も私を束縛しない

自由が奪われる事がない

“私”が私でいられるところへ























悲 哀 愛  カナシクテ

ふと 胸が痛むときがある

理由もないのに ただ哀しみが溢れ出る

無性に悲しくて 哀しくて 愛(かな)しくて

どうして良いか分らずに

零れ落ちる涙を 止める事さえ出来ずに

声をあげる事も無く ただ静かに涙は流れていく



そんな日は 人の温もりが戀しくなる

忘れてしまった その優しさ その暖かさを



堰を切ったように溢れる 感情の波にのまれて

知らず 眠りに落ちていく

いつか 知るのだろうか

この 哀しみの 理由(わけ)を























桜雨

咲き誇る満開の桜

まるでその儚さを天が少しでも気遣っているかのように

絹糸のような雨は優しく花弁を濡らすように降りてくる

春の和らいだ空気も少し今日は硬く感じられる

この北の地にようやく訪れた華やぎも

まもなく終焉を迎えるだろう



だが、その命が風に舞うまで暫し時間が残されているのなら

今しばらくこの時をゆっくりと楽しもうじゃないか























忘却

消えていく

消えていく

消えていく



私の中に眠る想い

時が流れるごとに

伝えなかった言葉

告げることの出来なかった想い

いつか全ては忘れ去られて

私の中からも消えてしまった想い達は

それでもどこかに残るのだろうか

世界に溶けて

いつか再び・・・























とき

全てのものの上に

時は流れる

全ては常に変化し続けている

永遠の事象は存在せず

変化が訪れていないかのような

この私の上にも時は静かに降り積もる



だが私はそれを厭いはしない

老いや死は恐れるべきものではなく

生の道程の一つであり結末でしかないが故に



生が時には苦しみともなるように

死もまた恐怖の象徴ではなく

安らぎともなりうるというのに



生きることを恐れ生まれいでるものが何処にいよう

死を恐れ生きることは何も生み出しはしない



死を否定すること

それは生をも否定に他ならない








生と死と

全てのもの達が

生まれたその瞬間から死へと歩み続けている



成長と老い



言葉は違えど共に

死への道筋であることになんら変わりはない



かつては喜びを感じていたそれに

何の恐怖を感じるというのか



何をためらう事がある



生きる事は死へ立ち向かい

そして受け容れる事



重要なのは如何にその生を活かすかだ























光と闇と

光は闇の中でこそ輝き

闇は光があって初めてそれと認識される



最も遠くて近いもの



決して相入れることはなく

それでいて互いに無くてはならぬもの























光の中には影が出来る

私は闇を恐れないから



闇は恐怖だけをもたらすのではなく

安らぎをももたらすものだから

私は闇を恐れない



だから、私には貴方の言う恐怖はわからない

「お前は闇に落ちるだろう」

貴方はそう言ったけれど

私にはちっとも恐ろしくないのです

闇がどれほど恐ろしいものだというのでしょう

私たちは光の元で働き

闇の下で眠ります

それは二つとも欠いてはならないものです

光がなければ生きることは出来ませんが

闇がなければ休まる事もまた出来ぬのです

私たちは光ばかりの世界でも生きることは出来ないのです

闇の中で私達の目は働かず、

光の中で私たちの目は潰れる

貴方に問おう

光ばかりの世界がどれほどのものかと























無題

紅に染まる町並み

沈みゆく太陽を見つめながら

色を失っていく景色を眺めていた

永遠のような一瞬

私は、そんな一瞬の連続の中に生きている























想い

熱きマグマが 急速に冷えて生まれる

美しくも脆い 黒曜石より

大地の底で 永い時をかけて

ゆっくりと 硬く美しい結晶になる

そんな 水晶のように



私は貴方を愛していきたい























終焉

紅く染まる大地に

幻影を見る



炎に包まれた町並み

知らないはずの景色

離れてしまった

貴方の 手



哀しみの中で気が付けば

そこはもう夜の世界



幻は去り 影は往った

私はそうして 現へ還る























始まりと終わり 混沌の中で

暗闇の中、歩きつづける

何処へ続いているのか、行き着く先があるのかさえ知らずに

そもそもわたしが歩いているのは道なのか

わたしが歩いた道が道となる、そんなことを言った人がいたけれど

果たして、わたしが歩いてきたこの行程は道になっているのだろうか

それを知ることは叶わない

ここは永遠の闇

けして見通すことは出来ない

もしかしたら同じ場処を回りつづけているのかも……

たとえそうだとしても

わたしは歩みを止めはすまい

わたしは何時までも歩きつづける

この果てしない暗闇を

もしかしたら、後一歩向うには扉が待っているかもしれないから























世界

草のうねりに 風を見て

潮騒に 月の距離を聞く



土の匂いに 作物の味を嗅ぎ

木々の香りに 風の歌を聴く



そんな彼女の見聞きしていた世界を

僕は知りたい

彼女の言葉を もう一度聴きたいんだ























遠い隣人へ向けて

天の星に向かって手を伸ばす

決して掴む事は出来ないけれど・・・

それでも

手を伸ばさずにはいられないほどに

美しく輝く星々



あの星の海のどこかに

きっといるのだろう

私たちの遠い隣人は



もしかしたら

彼らもまた

手を伸ばしているかもしれない

彼らの空に輝く星へ

遠い隣人を想って・・・



私たちは手を伸ばす

美しく輝く

哀しくなるほどに懐かしい星々へ























何処へ

海から魚が消えた

森から小鳥の囀りが消えたのは何時だっただろう

木々が葉を茂らすことはなく

草花も芽吹くことはない

寂しく揺れる錆びついた公園のブランコに

子供の姿はもう見えない

聞こえてくるのは

工場の機械音と自動車の騒音

見えるのは薄汚れた空だけ

人の姿は何処に行ったのか























春によせて

燃えよ

萌えよ

緑よ 萌えよ

春の息吹は すぐそこに

新芽よ 芽吹け

若葉よ 芽吹け

春の息吹に 目を覚ませ

残雪も 厚き氷も

溶けて流るる水となれ























道程

遠い道程歩いてく

私達は

何を目指して

進んでいくのだろう

迷い

時に道を外しながらも

それでも

何かを目指して

その道の先にある

何かを見るために

歩き続けてる

それが何かも分からぬのに

それでも

私達は

それを求めて

いつ終わるとも知れない

この道を歩き続けている

その道の先には

何もないかもしれないというのに

それでも

その先にある何かを

夢見て

願う

その道の果てに

私達は何を見出すのだろう























カホリ・ニホヒ

雨の音。

水の声。

風の囁き。

海の匂い。

潮の香り。

大地の薫り。

太陽の匂い。

馨り立つ草花。



私を包む色彩(いろ)の奔流。

























忘れないで

生きようと願う強い思い

それだけが

貴方の行く道を照らす

ただ一つの標

暗い闇の中の一筋の灯火























無題

私の中に見える影は

月の光を映して消える

日の影の中で

光は現われ

空の闇に消える



光と影は交じり合い

喜びも悲しみも愛しさも

混沌から心が生まれた

入り乱れた曖昧な感情の奔流が

私の中を駆け巡る























藍天

東の方 太陰輝き

西の方 太白輝く

中天に 螢惑燈り

天狼 後を追う



藍の天に星の花散り

進み行く船の梶取る桂男は

白雲の岸に暫し身を寄せ

長き夜の旅を行く























理由

天はそこに在り

地は此処に在る

生きる事に 不自由している訳でもないのに



何故 先を望むのか

どうして この先を夢見てしまうのだろう























夕 〜残光〜

夜の影に包まれていく町並み

まるで闇に飲まれるようで



僕はその先の

ただ一筋の光を見つめていた























赴くままに

鳥が風に舞うように

魚たちが水の流れにのるように

どこか遠くへ旅に行こうか

誰も知らない不思議の国へ



鳥のような翼はない

魚のようなヒレもない

だけど私には足がある

大地を踏みしめ歩ける足が



旅に出るには

白兎の案内も

鏡を抜けることも必要ない

クローゼットを通り抜けたり

不思議な本を読むことも



大切なのは

ほんの少しの勇気と好奇心

そしてなにより

想像力(=創造力)



3つの鍵を手に入れたなら

心の扉を開け放とう

時間も空間さえも跳び越えて

世界の果てまで旅をしよう

























深い藍の空に 一際輝く青白い月

他の星々の光さえもかき消すほどに

天高く輝くは 夜の女神



その光は太陽ほどに強すぎる事は無く

優しげに地上へと降り注ぐ



月は鏡

日の光を反射して

夜の地上を照らしだす

まるで大地を見守るように



天にかかる美しい鏡よ

どうか光のように

私の想いも反射させて

この想い どうか彼の元まで届けて欲しい

そして 彼の眠りに安らぎを